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田中和子の区議会レポート

     杜撰な制度設計―分配戦略
◆2021年11月19日、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定された。これは岸田総理が掲げる未来を切り開く「新しい資本主義」に位置づけられた、「分配戦略」の1つで、保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を2022年2月から前倒しで行うという施策です。これを受け、区議会総務委員会で、第5回の補正予算審議が行われ、保育士等処遇改善臨時特例事業として、私立認可保育所等への国庫補助金3,199万7千円を含む補正予算は成立しました。
◆自治体によって異なるが、おそらく全国の公立保育所はこの特例事業に則り保育士等の処遇改善を行っていなません。「公立保育所の職員は行政職給与表が適応されており、保育所職員だけ賃上げがなされると来年度の人事院委員会勧告で行政職員の全てがマイナス勧告となる可能性があるため予算計上をしない。また、公立保育所に勤務する会計年度任用職員についても正規職員との均衡を考え予算計上をしない」というのが大方の自治体の方針でした。
 さらに問題は、国の特例事業は、早朝など時間外部分だけ働く保育士は対象外となっていることです。
◆内閣府の見解は、「この補助金はコロナ禍の最前線で働く人を支えるとう趣旨であり、民間だけでなく公立の正規職員、非正規職員も差はないということで対象にしている。実際にどう上げるかに関しては、個々の事業所や自治体で判断することになる。例えば公立については、既に十分な賃金が支払われて正規職員は対象にしないとう対応も可能である。公立保育園は一般事務と同じ給与表を使っているところが多いので、そのような場合は調整手当のようなかたちで上げることもできる。このことは各自治体に通知している。」とのことでした。
◆そもそも、国家公務員の場合、保育士等の給与については国家公務員一般職の福祉職棒給表に該当し、地方公務員である自治体に勤務する保育士は一般事務職と同じ給与表であるという違いを理解していないことや対象からこぼれ落ちる人がいる杜撰な制度設計といわざるを得ない。

2022年度の他区の予算案は
~デジタル化と脱炭素社会~
新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、文京区以外の22区の予算案を、「都政新報」と新聞各紙の記事から報告します。多くの記事からの抜粋ですので、田中の独断によることをお許し下さい。
〇昨年度より減額予算を組んだのは台東区と港区だけ。台東区0.4%減、港区1.9%減です。
〇全体的に、昨年度より保育所入所待機児童数が減少傾向を見せ始め、新規の保育所開設はかすんでいる中、江東区の「私立保育所11園を新規開設」が目立ちました。
一方、2019年度に待機児童ゼロを達成した港区では、待機児童ゼロから定員の空き対策も含め、区内の未就学児童がいる全家庭に「子育てニーズのアンケート調査」を行います。
〇新型コロナ感染症対策として、昨年度のように注目される事業を掲げている区はありません。
多くの区が掲げたのは自治体のデジタル化と脱炭素社会の構築です。

●下の表は、他区(7区)の2022年度予算案の特徴を一覧にしたものです。 
因みに文京区の区民一人当たり歳出額は49万6,478円で、昨年度より2万円増加しています。
区名 一般会計 一人当たり歳出額          特      徴
北 区 1,622億300万円 46万1,751円 パートナーシップ宣誓制度創設、北とぴあ改修、高齢者実態調査より高齢者安心相談センターごとに分析目標達成に向けたモデル事業を行う。
千代田区 691億7,700万円 103万1,737円 2メガワット再生可能エネルギー発電を地方で構築、行政のDX化17億、全庁ランシステムの改修。
練馬区 2,912億4,480万円 39万4,449円 2021年度に「かつてない財政危機の到来」として施設の改修を凍結したが増収で解除する。区子ども家庭支援センターに都の児童相談所設置、ヤングケアラー実態調査を行う。
足立区 3,154億3,000万円 45万7,737万 世帯所得200万円以下に10万円給付、900円以上のレシート9枚で2000円分の商品券発行事業とキャッシュレス決済事業でのポイントも導入する。
世田谷区 3,336億3,400万円 36万4,372円 不登校特例校分教室開設、ひきこもり窓口一元化、妊娠を望む人へのSNSでのサポート、医療的ケア児を6時以降受け付ける通所児童施設に補助を行う。
荒川区 1,071億6,000万円 49万7,162円 移転の女子医大東医療センターの建物の一部を使い、令和あらかわ病院・令和あらかわクリニック開設、日暮里繊維街「ふらっとにっぽり」を活用し、ファッション関連創業支援施設卒業生が区内で事業を展開できるように事務所賃貸料を最長3年間上限5万円補助。
豊島区 1,357億9,250万円 47万9,250円 区政90周年の一事業としてSDGsの視点で未来を考えるワークショップ「区こども未来国連」を開催、2025年万博で開かれる「こども未来国連」への参加を目指す。「昭和歴史文化記念館」オープン。
 (「都政新報」と新聞各紙をもとに田中和子が作成)

◆23区の予算から、人口一人当たりの歳出額の順位と、予算額が一番多い費目を見てみましょう。 
第1位:千代田区  103万1,737円(子ども費 28.2%)
第2位:中央区   72万7,752円(保健福祉費 32.7%)
第3位:港  区  61万9,403円(民生費  36.3%) 
第4位:台東区  51万9,690円 (民生費  36.8%)
第5位:荒川区   49万7,162円(民生費  55.4%) 
第6位:文京区  49万6,478円(民生費  45.2%)
以下は21~23番目です。
第21位:練馬区  39万4,449円 (保健福祉費 31.9%)
第22位:世田谷区  36万4,372円(民生費 45.5%)
第23位:杉並区  35万5,622円(保健福祉費 53.6%)
千代田区の子ども費は、文京区でいえば教育費に相当する費目です。
因みに第1位から第6位まで、第21位から第23位までの全ての区では、教育費の占める割合は2番目に位置しています。
また、保健福祉費は文京区の福祉費と衛生費を合わせた性質を持つ区もあり、簡単には比較できませんが、区民の福祉関係や教育に予算が使われることがわかります。

◆23区の脱炭素社会に向けた取組を見てみましょう。           
どの区も何らかの取り組みは見られますが、田中の目に留まったものをお知らせします。
中央区:館山市臨海学校跡地で太陽光発電施設を整備。区内6施設で再生可能エネルギー100%の電力を導入する。
江戸川区:CO2排出を実質ゼロにするモデル公園「えどがわゼロ・エミッション・パーク」を整備する。
千代田区:2メガワット再生可能エネルギー発電を地方で構築する。
板橋区:再生可能エネルギー100%の電力で走行する電気自動車の購入と導入拡大を図る。
足立区:再生可能エネルギーを導入した家庭や中小企業に協力金2万円を2年間支給する。
品川区:環境学習交流施設をオープンし、屋上に太陽光パネルを設置する。
江東区:持続可能な社会構築につながる知識を試す「環境検定」を実施する。
目黒区:地球温暖化の影響や地球に優しいライフスタイル等の普及・啓発を図るキックオフイベントを開催する。

文京区は、シビックセンターへ再生可能エネルギー100%の電力を導入、テイクアウト容器等をプラスチック製品から環境配慮型に切り替え補助(対象店限定)、脱炭素社会を目指すことに賛同する事業者が実施する脱炭素の取組や効果等の共有・発信等を行い、地域全体での脱炭素社会形成を進めます。

◆23区のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組を見てみましょう。 
DXとは、行政がデジタル技術を活用して行う行政サービスを向上させる取組です。

千代田区:自宅から出生・転居届を出せるようシステム改修、業務改善のため庁内LANシステムの改修を行う。
墨田区:庁内研修で電子申請やキャッシュレスなどに対応する。
江戸川区:窓口業務効率化のため、39の相談業務に人工知能による支援システムを導入する。
相談内容を自動で文字起こしできる機器を整備する。
葛飾区 :庁内のDX研修で職員のデジタルリテラシーを高める。
台東区 :DXの導入により区民サービスの向上と業務改善を図る。
目黒区 :客観的根拠に基づく政策立案のため、外部専門家を活用したデータ利活用に取組む。

文京区はRPRの導入(定型業務のための自動化ツールで、文京区では庶務事務システムや電子申請データの受取などに利用しています)、また、AI(人工知能)による議事録作成やAI─OCR(AIでの手書き文字等の認識によりコンピューターが認識できる文字モードに変換します)を用いた帳簿の作成に取りかかっています。

◆コロナ下での若者の自殺者の増加等を受け、若者支援に力を入れる区もあります。
大田区:子ども若者相談窓口設置(15歳から39歳)
北 区:若い女性が気軽に相談できる「女性のためのLine相談to U」を開始
足立区:高校中退防止と中退後の支援、若者支援協議会設置、
      若者相談の開催曜日と時間を拡充 
中野区:引きこもり相談窓口新設



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